5月4日セゲド(ハンガリー)出張

5月4日セゲド(ハンガリー)出張

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 結局10ヶ月以上を費やすことになった滞在許可証取得のためには、別途指定のクリニックで健康診断を受けなければならなかった。その健康診断の通知が届き、期日をみてびっくりした。期限は何とその翌日であった!

 翌日は午後からハンガリーへ出張でシャルル・ド・ゴール空港からブダペスト行きのチケットをとっていたため、健康診断を延期できないか役所に電話をして交渉してみたが、やはり仕事を増やしたくないのであろう、「だめだ」「明日行くかさもなければ2ヵ月後」の一点張りで、らちがあかなかった。パリに戻ってからでは間に合わないため、どうしてもその日の午前中に健康診断を受けなければならなくなった。更に運の悪いことに、クリニックの場所はとてもアクセスの悪い、不便な場所であった。
 当日は朝早起きして出張の荷物を抱えてクリニックに行った。そこで更に、「バスに乗ってどこそこの病院にいってX線写真をとって戻ってくるように」との指示もあり、バスで別の病院へ一往復する羽目になった。ブーツを履いたまま身長体重を測るなど、身体計測も信じられない程いい加減であった。クリニックで順番まちしている間も飛行機に間に合うか心配でドキドキしていたが、幸い全てのプロセスを綱渡りで乗り切り、なんとか出発に間に合うことができた。フランスの役所には常々振り回される。
 無事部ブダペストに到着し、市内から電車に乗り換え、無事夕方8時Szeged市に着いた。ハンガリーでは最も著名な生物物理学者、生物物理学研究所のOrmos教授が親切にも駅でお出迎え頂き、彼の車で軽く街を案内して頂いた。今でも語り継がれるティサ川の大洪水の時の話も語って頂いた。Szegedはハンガリーで唯一ノーベル賞が出た町である。戦前にセント=ジェルジ・アルベルトらによりビタミンCが発見され、アルベルトが1937年ノーベル生理学医学賞を受賞したのである。その後、レストランでご当地料理をご馳走になり、日本やフランス、ハンガリーでの研究環境や、軽くお互いの研究の話もした。
 Ormos先生が、日本では教授が大学院生をひどくこき使うと聞いたが本当かと聞かれた。自分が修士過程1年に、研究室に所属して約10ヶ月目で胃潰瘍ができたことを話したところ、「Oh my goodness! 胃潰瘍は年寄りがなるものなのに!」とびっくりされていた。日本の研究業界では、胃潰瘍になると、ようやくまともな研究者に近づいたかと褒められるなど、体を壊したり自己を犠牲にすることのアピールで評価が上がることも多い。冷静になって考えれば、それは研究の進捗にとってはマイナス要因であることに間違いはないのであるが、文化と価値観というのは物事を冷静な視線で客観的に判断すべき研究者達をも盲目にしてしまうのであろうか。