4月12日キュリー研セミナー@マリー・キュリー記念講堂

4月12日キュリー研セミナー@マリー・キュリー記念講堂

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 私にとってキュリー夫人は、幼少期に読んだ自伝で初めてその存在を認識し、家族で見ていたテレビ番組「世界ふしぎ発見」でキュリー一家が築いたその研究所の存在を知り、科学研究に携わるようになってからは歴史上最も重要な科学者の一人であるだけでなく、実際にその研究業績や研究スタイルについて自分なりの意見をもちながらも最も尊敬する科学者の一人であった。そのキュリー夫人が、キュリー研に在籍してからは、歴史上の人物から、今現在自分の研究活動に様々な面で影響を与え続けている研究所の偉大な先達という存在に代わっていた。
 キュリー研究所内にはキュリー夫人が使っていた実験室と書斎がそのまま残されており、一家で受賞した多数のノーベル賞の賞状などとともに博物館になっている。その同じ建物の一角にマリー・キュリー記念講堂があり、壁にはキュリー夫人がラジウムの質量を計算した実験ノートの肉筆のファックスや当時のキュリー一家の実験現場を撮影した貴重な写真が飾られている。
 この小さな研究所の小さな講堂は、輝かしい歴史とブランドを誇り、毎日のように世界各国から著名な教授や科学者達の招待講演が行われ、誰でも自由に聴講し議論に参加することができた。この日、その講堂で、東大におけるこれまでの研究成果をもとに講演を行う機会に恵まれた。講演題目は”MEMS based microsystems for single molecule measurements”。隣の講堂での著名なロックフェラー大学教授の講演と時間が重なってしまったため集客を心配していたが、一般に開放された講演でもあり、キュリー研究所の同僚・先生方のみならず、パリ6 大学名誉教授でジャック・モノー研究所の小桧山教授ら、外部の知人もいらしてくれた。

 講演終了後、小桧山先生から「君の発表スタイルは東大スタイルだ。アメリカではいいが、ヨーロッパではダメだ。京大の奴らにも嫌われるだろう。」と、今までうけたことのないアドバイスを頂いた。これは研究成果をアピールする程度についての助言であり、東京大学やアメリカでは研究成果を強くアピールする文化があり、京都大学やヨーロッパの方々からみると自慢しているように映るそうである。貴重なアドバイスであると同時に、先生が生きた時代の学閥意識の強さを改めて実感した。また、色々な国籍の方々から色々な視点で、実際の研究内容から発表スタイルについて、様々な助言を頂き、研究の方法論から発表スタイルに至るまで、様々な価値観を学ぶことができた。