10月25日まゆ毛先生最後のレッスン

10月25日まゆ毛先生最後のレッスン

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 この日は、今回のフランス滞在で最後のピアノレッスンとなった。通い慣れたサン・ペテルスブルグ街のギャルドン先生宅で、プーランク、サン・サーンスの曲を聴いて頂いた。今日は何故か初めからとても機嫌がよかったのに加え、私のど素人感満載だったピアノが多少は進歩したことに対して、Bien, bien, bien! Bien progressez!(よろしい×3回、良く進歩したな)、 「よく練習したな、ブラボー!」と、おそらく初めてお褒めの言葉を頂いた。これまでがあまりにもひどかったことは百も承知であるが、夏のニース音楽院での修練と、沖縄公演に向けての練習で、私のピアノは確実に変わったのだろう。この日も、相変わらずまるで神がかっているかのような、素晴らしいレッスンだった。レッスン終了後に琉球紅型をプレゼントした。何度も沖縄を訪れている先生は、中国半分、日本半分という琉球文化はよく理解しているらしい。
 最後に先生と写真を取りたいとお願いしたところ、ちょっとまったといわれ、隣の部屋へ向かい立派な上着を着てきて戻ってきたかと思うと、いきなりピアノに座り、シューマンのクライスレリアーナを弾きだした。ピアノの譜面台を倒して「この角度からがいい。この角度からとるように」と、おそらく彼の決めポーズをとってくれたので、遠慮せずに数枚、ピアノを弾く先生の写真を撮らせて頂いた。生徒のお願いで記念写真をとるのに、ここまで気合いを入れるのは職業柄だろうか。彼と出会っていなければ、科学研究に終始していたであろう私のパリ生活を、音楽と芸術に満ち溢れた滞在にしてくれた。彼は私のパリ生活を大きく変えてしまった恩人である。今後ピアノを続けることがあれば、彼に因るところが大きい。今後も彼にピアノを習う機会があるかもしれないが、とりあえずここで一区切りである。感謝してもしすぎることはない。
 晩はシャンゼリゼ劇場で内田光子さんのピアノリサイタル。ベートーヴェン作曲の長大なハンマークラヴィーアソナタを通して、オバケのような光子ワールドを聴かせて頂いた。