10月2日パリ生活残りわずか
この時期のパリは、留学や勤務を終え帰国する者と、新たにパリにやってくる者が交差する。私も10月末で完全帰国することになっていたので、残り少ないパリでの生活を悔いのないものにしようと、仕事だけでなく、全ての活動に積極的になっていた。この日の晩、留学のためパリに到着して間もない、ニース音楽院の夏季講習で知り合った友人の新居を訪問した。はじめは気付かなかったが、1年程前の11月30日、ピアノを探しに方々を訪ね歩いていた時、現在借りているプレイエルに出会い、ひと弾き惚れをしたのが、当時倉庫に使われていたまさにこの部屋だったことを知った。パリに到着して1カ月の時に訪れた部屋に、奇しくも帰国の1カ月前に偶然訪れた。
近所のフランス家庭料理レストランで、とても美味しい煮込み料理と、摩訶不思議でかつ興味深い親友のお話に、パリを離れる寂しさが一入だった。