2008年10月30日ティム・ハント先生セミナー
キュリー研究所ベルグ記念講堂でティム・ハント先生のセミナーがあった。彼はSir 、Prof.、 Dr.と、3つ以上の称号を持つ。ハント先生は、ナース先生と一緒に2001年ノーベル生医学賞を受賞している。今回はガンとの戦いを銘打っているキュリー研(正確にいうとキュリー病院)を意識してか、ガンや腫瘍をテーマに話された。とても話がお上手で、ウィットに富んだ皮肉や冗談を連発された。自分と専門分野が離れているため、話についていけなかったら途中で退席しようかと思っていたが、とても話が面白く、結局最後まで居残って聞いていた。しかし、結局何を話したか思い返すと、何も頭には残っていなかった。
同じセミナーを聴講していた、隣に机を構える理論物理学者のP君と感想を話し合ったところ、「彼は、結局ガンはファッキングな病気だということ以外何も言っていなかった」と一蹴した。地位や名誉のある人物であるかどうかを気にせず、物事の本質について自由に意見を交わせるここの研究環境と同僚達からは、いつも日本ではありえない素晴らしい体験と刺激をもらう。以前スウェーデンで行われた学会の招待講演で、江崎玲於奈先生と共にノーベル物理学賞を受賞し、生物物理の分野に移られたアイヴァー・ジェーバー教授が、「物理学者が60%といえばぴったり60%だが、生物学者が60%といえば、30%から90%のあたりの値を指す」と冗談を述べられていたのを思い出した。数学・物理系研究者にとって、生物系研究者の話は、時には全く、曖昧に聞こえるのだ。