10月11日セミナー@ラカッサーニュ記念講堂
キュリー研究所内でこの1 年の成果発表、つまるところ、FRMTと名付けた新型磁気ピンセットと、それを用いて初めて実現したRad51タンパク質によるDNAねじり運動計測の結果報告を依頼されていた。アイディアや結果の情報が外部に漏れ、世界のライバル達に漏えいするリスクを危惧した先生方の意向により、所内の一部の関係者だけに声がかかり、午前中の時間帯を選んでのセミナーになった。
終了後何度も研究所の教授達から「君の実験は実に美しい」という賛辞を頂いた。美しいという表現がいかにもフランスらしい。特にノーベル物理学賞を1人で受賞したフランスの英雄、ドゥ・ジェンヌ先生からは「何と面白い実験だ!」と様々な質問をうけた。この発見のカギとなった、新型磁気ピンセットの発明は、当初光ピンセット装置を用いるという先生方の案では期限内に成果を得る事は難しいという私一人の経験、理論的根拠と直感から先生方を説得し、本当にうまくいくかもわからない新型磁気ピンセットの開発を始めた事に始まった。その事を回想したヴィオヴィ教授から「僕の言うことを信じなかったことが君の素晴らしいところだった。」と、フランス人らしいウィットの効いたお言葉を頂いた。
午前中キュリー研で“講演”を行なった同じ日の夕方、今度は沖縄での“公演”のため、シャルル・ド・ゴール空港へ向かった。パリから東京へ完全帰国する2週間前に、東京経由で沖縄に2泊2日滞在するという、私にとっては何ともタイミングが悪く、負担になるスケジュールを余儀なくされたが、沖縄で是非とも出演しないわけにはいかない演奏会があった。そのため、パリからソウル経由でまずは東京へ向かい、その夜は友人の家に数名で集い、朝まで飲み明かし、翌朝始発で羽田空港から沖縄へ向かった。