10月28日ロストロポーヴィチ、アルゲリッチ、ヴェンゲロフ@ガボー
夕方はサル・ガボーで開催された、ロストロポーヴィチ財団主催のチャリティーコンサートに向かった。一階席は各界の有名人達が招待客として鎮座し、メディアも大勢集まっていた。この演奏会で、マキシム・ヴェンゲロフのヴァイオリンと、マルタ・アルゲリッチのピアノを聴く機会に恵まれた。チェロ界の重鎮ロストロポーヴィチはこの日はチェロでなく、指揮を振っていた。この公演の直後に亡くなったことを考えると、貴重な歴史的機会に居合わせることができたことは、まさに幸運という以外はない。「ただならぬ関係」であったと岩崎先生がおっしゃっていた、ロストロポーヴィチとアルゲリッチによるハイドン作曲のピアノ協奏曲は、この世で聴いている音楽とは思えない程自然で純粋な美しさと品格が感じられ、まさに神業だった。アルゲリッチのピアノは、個人の主観が一切入らない、天から降りてきた音楽をそのまま流しているかのような演奏だった。このような音楽は、偉大な女性演奏家の晩年の演奏から聴けるのだと、後日とある音楽家から説明をうけた時、まさにあの時の演奏がそうだったのかと納得するに至った。アンコールはクライスラー作曲愛の悲しみのラフマニノフによるピアノ独奏版編曲だった。
指揮者の小沢征爾さんも招待客でいらしていて、回廊でしばらく立ち話をしていた。すると、マエストロ(小澤氏)が洗面所に行きたいから持っていてくれと、突然彼のコートを渡された。彼か戻るまでどうしていいのかわからず、ただ彼の戻りをまっていた。とても気さくで話しやすく、面白い方だとの印象をうけた。中休みには、招待客のみ参加できるパーティーがあり、俳優、女優や著名人らとその付き人らしき面々が続々と入って行くところを、招待されていない私は側から興味深く観察していた。パーティー会場に入っていくレセブリティー達を見てると、老若男女、皆とても背が高かった。フランスの上流階級はその他の階級と何百年も血縁がなかったため、平均身長に10センチ近い差が生じているという話しを思い出した。